この記事は、
「建築学生としての必需品は、少し高くてもいいものが買いたい。」
「◯万円くらいの臨時収入があったけど、散財せず有意義な買い物をしたい。」
「ゼミ室での予算が余ったから、研究室のQoLをあげるなにかを買おう。」
と考えている建築学生のための記事です。
高価だし、必需品・マストバイトはとても言えない。
けれど、建築学生ならだれもが
- 「買ってよかった」
- 「もっと早く変えばよかった」
- 「こんなに便利なものがあったのか!」
と思えるものを紹介していきます。
コンセプト
個人的には学生が最初に始める自己投資というものは、読書とか旅行とか資格勉強とかではなく、まずは時間や健康や体力を消耗させる原因を取り除く事に自己投資のリソースを割くのが賢明だと思うのです。
この投資によって生まれる日々の余力や余剰が、お金や知識や経験への投資を地道にコツコツ小さく進めるための基盤となるからです。
というわけでこの記事では、
それを買うことによって健康・体力・時間の浪費・損耗を著しく減らすことができるグッズ・サービス
を中心に紹介します。
健康維持編
建築学生は模型作成や製図作業で目も首も肩も腰もガチガチです。
眼精疲労・頭痛・肩こり・腱鞘炎・腰痛の苦痛と恐怖は、建築学生の誰もが恐れ慄く生地獄です。
しかしこれらは、使用機器の変更によって、劇的な予防・改善が見込めます。
椅子:E-WINゲーミングチェア
例えば椅子選び。
一般に、膝と腰の角度が90度より小さくなる姿勢は、腰に負担がかかると言われています。
漫画家・アニメーター・建築家など、机に前かがみになって作業するタイプのデスクワーカーの場合、ゆったり座るための椅子で作業するとどうしても体を前に倒すので膝と体の間隔が狭くなってしまいます。
なので製図とか作画とかみたいな背もたれに座って行えない作業を行う人は、リクライニングよりむしろ「前傾チルト機能」がついてる椅子を選んだほうがいいです。
で、前傾機能があって買いやすい価格の椅子を探してみたところE-WINゲーミングチェアに行き着きました。
普通前傾機能のある椅子は平気で5万円以上することを考えると、不安になるほどの低価格です。
よっぽど品質に問題があるのかと思いましたが、レビューを見る限り多少ガタつくくらいで問題なく値段以上の働きをしているようです。
少なくとも、筆者が製図室で大学から支給された旧共産圏みたいな丸椅子に座ってるくらいなら、これを持ち込めばよかったです。
マウス:ロジクール ワイヤレスマウス SW-M570
腰痛の次に怖いのが腱鞘炎、つまり手首(の筋肉と骨の接続部品)の磨耗とそれによって起こる激痛です。
腱鞘炎は一度発生すると治りが遅い上に再発しやすい上に、痛みが起こるうちはあらゆる作業の進行が困難になります。
腱鞘炎対策用マウスとしてよくおすすめされるのがコチラ。
パソコンに慣れた人やゲーマーの人には見慣れた人も多いと思います。
初見の方は結構インパクトあるのではないでしょうか?
いわゆる「トラックボール型」のマウスというものです。
通常のマウスと異なり、側面にある球体を親指で転がすことでマウスカーソルを動かすもので、その性質上全く手首を動かしません。
そのため、
- (机に叩きつけないので)操作がものすごく静か。
- 狭くて散らかってる場所でも場所を取らない
- CAD操作のような精密操作に最適
- 手首や肩への負担が極小
など、まさに建築学生のためにあるような強みをたくさん持っています。
慣れるまで一週間ぐらいかかるのですが、一度慣れてしまうと操作のたびにマウスを持ち上げていたこれまでのマウスがものすごく煩わしいものに感じられます。
キーボード:東プレ REALFORCE R2
最近だとライターやエンジニアを副業にしてる建築学生も多いみたいです。
そういう人はぜひキーボードの購入も検討してください。
エンジニアやライターは手首を痛めるとできることがなにもないので、その分道具選びは慎重です。
マウスといえばロジクール、キーボードといえば東プロです。
模型労力削減編
建築学科で機械化・効率化が一番かんたんなのは多分模型作成です。
模型の精度を決めるのは「測る」「切る」「貼る」の3要素だと言われます。
なので、この3つの工程を可能な限り機械化・省略できれば、模型作成の労力を削減しつつ、手作業で作るより遥かに精密で美しい模型を作ることができるようになります。
A3プリンター:A3 インクジェット複合機 TR9530
模型作成で最も集中力が必要でミスが生まれやすいのは「定規で図面の数値を読み取り、定規で材料に寸法をけがく」作業だと思います。
なので、定規のメモリを読み取る労力が省略できれば、模型作成って遥かに楽になります。
CADが使えて、かつ自由に使えるプリンターがあると、定規でちまちま図面を切り出すより、型紙を印刷してそれに合わせて材料を切るという裏技ができるようになります。
具体的にはこんな感じ。
- CADで模型図面を作成する
- 紙に図面を印刷する
- スプレーのりで、印刷した型紙を材料に貼り付ける
- 型紙に沿って材料を切断する
材料の水平垂直が手作業でけがいたときより遥かに正確なので、組み立てた時の隙間や歪みもほとんどなくなります。
特にスタディ模型の大量生産では、同じような模型材料やそのバリエーションを何回も切り出すことが多いと思いので、手元にA3が出力できるプリンターがあると模型作成がモリモリはかどります。
プリンターの選ぶ基準ですが、
- カラーか白黒か(白黒の方が圧倒的に安い。模型・レポート用ならこれでも十分)
- 最大印刷サイズ(A3まで推奨)
- 最大スキャンサイズ(A3プリンターでも普通はA4まで。)
- 自動両面印刷が出来るか
- スマホからも出力できるか
- USBやSDカードからも印刷できるか
- 給紙口の向き(手前から紙を入れるか、奥から入れるか。設置場所によっては重要)
あたりは、きちんと見てから選びましょう。
家庭用レーザーカッター: FABOOL Laser Mini
もっといえば、「測る」に加えて「切る」作業も機械化できます。
かつて一台数百万円したレーザーカッターが、昨今学生が個人で購入できる水準まで低価格化が進んでいるからです。
例えば、 FABOOL Laser Miniの場合、
- 加工範囲:30cm×23cm(A4程度)
- 出力:1.6W(1mm以下の厚紙・クラフトボール紙が切断できる程度)
- 外部カバー:なし
という性能で税抜59,800円(税込64,584円)で購入できます。
(個人的には外部カバーはあったほうがいいと思うので、それも合わせて税込91,368円。)
全建築学科生が買える値段ではありませんが、ゼミ室で一台、共同購入で一台、ものづくりサークルの予算で一台、という形なら購入が不可能な値段ではありません。
家庭用レーザーカッターは、手のひらサイズの材料しか加工できなかったり、刻印はできても切断ができなかったり、微妙に模型作成の役に立たない物が多いですが、このカッターは一番低価格のものでもA4サイズの厚紙くらいなら切れます。
残念ながらスチレンボードは切断できませんが、手すりや格子窓、家具模型など人間の手では細かすぎて作ることができない繊細なディティールを加工させることは可能です。
より大きなもの、より分厚いものを切断する場合や、発生する煙や匂いを防ぐための専用カバーを設置する場合、別途購入費用がかかりますが、それでもMacBook Proと同じくらいの値段(20万円)で個人購入可能です。
これが大学に一台あるだけで、近世までの手工業から近代以降の大量生産ぐらい、製図室の文明レベルが進化するので、大学に集団で購入を申請する価値すらあると思います。
スチロールカッター:PROXXON 卓上スチロールカッター
スチロールカッターは大学で貸し出しを行っているところも多いと思います。
ただ、卒業設計の時期何かとかぶると、総てのカッターが貸し出しになっていてすぐ使えなかったりで、あんまり自由に使えるというものではありませんでした。
でもスチロールカッターって、スタディ模型とか敷地模型のように、とりあえず作ってみてから考える模型作りに使う道具なので、結構スピード感が大事だったりします。
とりあえずなんにも思いつかない時に、あまったスタイロを適当に加工して積み重ねてあそぶ、みたいなのも大事だったりするので、個人的に「使いたい時に使える」ことが大事な機材でした。
なので、上記のA3プリンターやレーザーカッターよりは優先順位が低いものの、個人で所有するメリットは結構大きいのではと思っています。
作業時間開拓編
調べ物をしたり、スケッチをしたりといった「アイデアを出す」「アイデアを整える」作業というのは、製図室や自宅だけでなく、通学中・旅行中・授業中・就寝前のようなスキマ時間でも行える作業です。
むしろそういった肩の力を抜いたタイミングだからこそ、柔軟に思考を広げられるという人も多いと思います。
そこで、いままでは
- 机に向かわないと
- 製図室に行かないと
- 図書館に行かないと
できなかったことをできるようにするソフトやサービスの紹介です。
iPad:Apple iPad PRO (11インチ
iPadを購入するとどのような変化が起こるのでしょう?
まず画面に向かう頻度が上がります。
机に向かわないと画面に向き合えないPCと異なり、iPadはソファでもベッドでもこたつでもカフェでも講義室でも電車中でも、いつでもどこでも起動できるiPadは、
- 「家に帰ったらメールを送ろう」
- 「製図室についたらこの画像を加工しよう」
- 「いまレンダリング処理中だからできること無い」
みたいな作業を先送りする悪癖をことごとく潰してきます。
あと、起動に至るハードルの低さだけでなく、起動してアプリを開いて作業に至る速度が爆速です。
例えば、これまで幾度となく繰り返してきた「設計課題やろう→PCを起動→なぜかYou Tubeを見てる→自分はだめなやつだ」という一連の流れが、iPadを買ったことで激減しました。
というのも、ついTwitterやYou Tubeをつい開いてしまうその原因は自分の自制心の無さにあるのではなく、単にPCの起動が遅すぎてモチベーションが消えていただけだったからです。
iPadは「〇〇を描こう。〇〇を編集しよう。〇〇をアップデートしよう。」のような、我々のやる気が儚く消え去ってしまう前にそのモチベーションを救い出してくれる救世主でした。
スマホのように屋外で使える「セルラーモデル」を買うには、スマホ同様docomo・au・Softbankなどで契約・購入するか、次項で紹介しているポケットWi-Fiなどを所持する必要があります。
(2020年4月4日:追記)
ちなみに、記事中ではiPad Proの広告を掲載していますが、絵を描くわけでも無いならiPad Airで十分です。
それと、「まだPCを持ってない」という新入生は、タブレットより先にPCを買ってください。
電子書籍サービス:Kindle Unlimited
以前も別記事にて紹介した電子書籍定額サービスのKindle Unlimitedです。
アマゾンに掲載されている電子書籍の内、「Kindle Unlimited」の記載のある商品を無料でで読むことができます。
このサービスのポイントは
「WEB上の情報では不十分」だけど「紙の本を買うほどではない」調べ物を、24時間いつでもどこでも閲覧できる点です。
建築学科はさまざまなジャンルの知識を広く浅く素早く得なければならない局面が多々あります。
高品質で専門的な一冊の書籍よりも、入門向けの「買うほどでもない」レベルの書籍を横断的に大量に読みたい場面が何度も訪れるのが建築学科。
こういった、短期集中的に特定ジャンルの全体像を把握したいというニーズに対して、KindleUnlimitedは絶大な力を発揮します。
- ネットで得られる情報よりは一歩踏み込んだ内容を
- 書籍一冊に満たない月額料金で大量に
- しかも図書館や書店に行くよりもはるかに気軽にアクセスできる
それがKindleUnlimitedの最大の長所であり、
同時にKindleUnlimitedを建築学科におすすめする理由です。
真夜中でも電車の中でも帰省先の実家でも、「コンペのアイデアが思い浮かんだ!この分野の情報を今すぐ調べたい!」という時にすぐ情報収集・検証ができるのが、Kindle Unlimitedサービスです。
詳しくは該当記事もぜひご覧ください。
Amazonの“Kindle Unlimited“で設計課題の情報収集が急加速したまとめ
自己投資は大きく二種類に分類できると思っています。
①「得るもの」(お金 経験 アイデア スキル)への投資
②「失うもの」(時間 健康 体力)への投資
建築学生は、①「得るもの」への自己投資が大好きです。
このことは、Googleで「建築学生」と検索した時のサジェスト結果からもよく分かります。
このように建築学生は、アルバイトで稼いだ金を惜しげもなく読書やPCや勉強に課金し、知識やアイデアや経験やスキルへとつなげることに強い関心を持っています。
お金も知識も経験もアイデアも、「使えば使うほど、新しく湧いてくるきっかけになる」という性質を持っています。
そのため、一度その使い方をマスターしてしまうと、常人には想像もつかないほど、爆発的にその量を増やすことができるのが特徴です。
なので、こうした高い自助意識を多くの学生が持っているという点は、建築学科という業界の大きな強みだと考えています。
しかしそれでも、建築学生にとっては②「失うもの」への投資のほうが、遥かに費用対効果が高いというのがこの記事での筆者の主張です。
というのは、①のような自己投資、すなわち自分の知識や経験や技術を増やすための努力というのは、在学4年間のうちに報われるとは限らないからです。
例えば「アイデアの出し方」「儲けのノウハウ」というものは、個人の得手不得手や才覚にかなりの部分を依存しています。
つまり、その運用ノウハウの属人性が高く、誰もが真似できるわけではありません。
そうでなくとも時の運や周囲の人間関係など環境依存の側面がが大きく、再現性に乏しいものです。
その上、資格を取ったり知識をたくさん覚えるという行為は、将来的な賃金や地位にとって影響を与えますが、在学中のあなたの苦しみや辛さの解消にはつながりません。
知識や経験や専門スキルの獲得という営みは、大量の時間や労力をつぎ込んだ上でようやく目標に辿り着ける、超超超長距離マラソンのような長い道のりなのです。
だから読書や旅行や資格のためにお金を注ぎ込み、課題やコンペや就活でのパフォーマンス向上に邁進しても、その見返りを得るより先にお金や体力や時間が枯渇する可能性のほうがずっとずっと高いのです。
こうした事情から、まだ20代にもかかわらず
- 「能力的には優秀ではあるけれども、学生時代に健康も体力も使い果たしており、徹夜続きでフラフラ。」
- 「不摂生や不眠がたたって体はボロボロ。もっているスペックの半分も発揮できていない」
- 「体力を向上させるための体力がない」
- 「効率化や生産性向上に取り組む時間がない」
- 「もうだめポ」
というような悪循環にはまった「最年少おっさん」が大学にも社会にもたくさんいる事に気づきます。
これに対し、時間や体力への投資、すなわち②「失うもの」への投資は一般性が高く、かけたお金や労力に見合った成果を比較的獲得しやすいジャンルです。
特に若いうちはもともと持っている体力や時間も多く、すなわち投資の元手が多い状態なので極めて有利といえます。
若者が100の体力を120にするのはたやすいですが、
30歳を過ぎた擦り切れ寸前のサラリーマンが20の体力を40にすることは極めて難しいのからです。
つまり②「失うもの」への投資は、先人たちの研究や取り組みを真似したり、あるいは機材や設備への初期投資によって、簡単かつ確実に将来的なコストを抑えたり、個人差を無視して問答無用で実生活を改善したりできるのです。