箱庭:小さな、あまり深くない箱の中に、小さな木や人形のほか、橋や船などの景観を構成する様々な要素のミニチュアを配して、庭園や名勝など絵画的な光景を模擬的に造り、楽しむものである。(Wikipediaより)
幼い頃から箱庭というものが好きでした。
そこから生まれた建築模型についてです。
箱庭とジオラマと模型との明白な違いというものは僕にはわかりません。
しかし、僕にとって「箱庭」という言葉には、写実性やリアリティよりも象徴性を重視したものでした。
空間のイメージを切り取ったとでも言いましょうか、ある種立体的なスケッチとでも評したくなる象徴的な響きが含まれている気がします。
児童や患者に素材を与え、彼らが創りだす過程や世界を元に深層心理を読み取る心理療法「箱庭療法」なる物もこの広い世界にはあるそうですから、あながち僕の考えも外れてはいないのでしょう。
今日はそんな箱庭好きが高じて生まれた、僕が“箱庭模型”と称している建築模型の紹介です。
といっても、あまり高尚な理屈を展開するものでもなく、また従来の建築模型と大差あるものではありません。
箱庭模型の特徴は3つです。
- 特に模型によって再現する元となるような、具体的な建築や設計を持たない
- 計画性を持たず、こんな空間があったらいいなという気分を重視して作る
- なるべく断片的に作り、模型外に広がる空間を意識する。
普通、スタディ模型にしろ、コンセプト模型にしろ、敷地模型にしろ、そこには何かしらの目的が存在します。
本来建築模型は、あくまで設計を通じてあなたの創りだした空間を、他人の頭のうちにも描き出すための手段です。
ですから、どんなに抽象的な模型であっても、それは実際に存在する空間、これから実現させることを目指したものです。
箱庭模型のモットーは気の向くまま作ることにあります。
幼いころ、自分の家の庭や、校舎裏の森に秘密基地を作ったような感覚を最重視しています。
そのためには、鉄道模型やガンプラのような精密さやリアリティは、却って邪魔になるのです。
100円ショップで購入した展示ケースの中に作り出すことで、より箱庭感が出るとともに、ケースという明白なフレームの存在が、かえって展示ケース外の空間を意識させるような気がしてきます。
また、中に配置した部屋やテラスを意図的に斜めにすることで、フレーム外の空間をイメージさせる効果をより強調しています。
こういった手法は、鉄道模型などの世界では有名な手法ですが、建築業界では使っている人をあまり見たことがありません。
しかし、断片的な空間の表現としては、場合によってはこれで十分すぎましょう。
もちろん嘘です。
そんな細かいことを気にせず作るのがコツです。
ケースに入れたのは埃がかぶらず保管しやすいからです。
初めは、箱庭趣味という建築学科と無関係の点から出立した遊びでしたが、次第に建築模型や設計にも好影響を与え始めるようになりました。
実利の点においても、俄然威力を発揮したのです。
- 模型づくりの練習になる。特に室内のディティールに関する能力は学生のうちはなかなか身につかない。
- 模型のストックが生まれる。部材を切り出したり、家具を作る際に少し余分に作っておくことで、模型の貯金が生まれる。模型技術だけでなく、もっと具体的な財産が少しづつ蓄積される。
- コンセプト模型として活用できる。単なる模型製作の練習だけでなく、内部空間の雰囲気を伝えるコンセプト模型としてそのまま提出できる。提出する模型全体の内部を作りこむことは大変だが、内部のインテリアについてだけ別枠でもう一つ作ることでかえって楽になることも有る。パースやスケッチとは別の雰囲気を作り出すことが出来る。
まさに記事タイトル通り、練習にもスタディにもプレゼンにも転用できる遊びでした。
こちらは、あえて壁も設けたもの。
この規模だからこそ、家具や内装にもこだわれます。
締め切りがある提出用模型だと、すべての部屋で高密度で作るのは難しいでしょう。
また、そんなに丁寧に作る意味もありません。
ちなみに、箱庭模型の比率はすべてS=1:100、この模型では30mm×55mmほど。
マッチ箱を二つ積み重ねたくらいです。
この記事で紹介してる他の模型もすべて同じ縮尺です。
この比率で作るのが、一番リアリティと作業労力と置いておくスペースのバランスが取れている用に思います。
同好の士を募るわけでもありませんが、よければ一緒に初めませんか?