- cad(3Dcad)
- Photoshop
- Illustrator
この3つはいわば「建築学科スキル」とでも言うべき代表的な表現技術です。
そして同時に多くの建築学科生が
「いつかやらなきゃ」
「将来的には使えるようにならなきゃ」
と思いつつその習得を後回しにしがちな代表的表現スキルですね。
これらの習得を後回しにし続けるか、きちんと学びながら回を重ねるかは3回生や4回生での表現スキルの差、時には成績の差や学生の自信の差になって表れてきます。
もちろんこうした技術は単なる表現手段に過ぎません。
ソフトが使えるか否かと建築学科として優れているか否かは全く別の話です。
しかし、周囲が使えるソフトの数が増えていき、表現の幅が広がってくる中自分だけがこれら建築学科スキルは一度習得のタイミングを逃すと、無意識に表現技術を過大評価・過小評価してしまいがちです。
- 3回生になってから覚えればいいや
- 自分にはセンスが無いからあんなかっこいいパースを描くのはムリだ
- ソフトを扱う技術みたいな本質的でない能力を上げるのは時間の無駄
当たり前ですが手描きもcadもPhotoshopもIllustratorも所詮手段です。
本来習得を後回しにする価値もないものであり、必要なものをその都度身につけてとっとと次のステージへ進むべき通過点以上でも以下でもありません。
そして技術習得は後回しにすればするほど自分の中でハードルが上がってしまい、ますます勉強に着手することが難しくなります。
それではなぜ僕たちは表現力を磨くことを後回しにしてしまうのでしょう?
それは「作るからにはすごいものを作らなければ」という自尊心です。
「いいものを作らなければ」という心理的ハードル
誰だって下らない作品は作りたくありません。
時間をかけてレベルの低いパースしか作れないと、自分までレベルの低い人間である気がしてくるからです。
ましてその作品を人に見せるなど言語道断です。
僕達はこれまで、人の失敗作を笑った経験や自分の創作を親・教師に駄作と評価された屈辱を有しています。
なので作品を作るときには極力失敗しないよう努めます。
事前準備を重ね、作る前によく考え、優秀な人の作品をよく学ぶことを教わったからです。
しかしこの「失敗したくない」という強い感情は、時に新しいことに挑戦する際には大きな癌になります。
むろんその恥やプライドは悪ではありません。
誰しもが持っている当然の感情です。
だから仲間や教授に見せるプレゼンの為にPhotoshopやcadソフトを学ぶことは大きな抵抗感を味わうことになります。
なぜなら建築学科にとってPhotoshopもIllustratorもCADソフトも人に見せることを前提とした「プレゼンテーション技術」だからです。
- 未熟な作品は人に見せたくない。
- でもPhotoshopもIllustratorも人に見せるための技術である。
こうした矛盾を孕んでいるからこそ、僕たちは意識するしないにかかわらず、
「ソフトの使い方を覚えるのは今じゃなくていいや」
と後回しにしたくなるのです。
この抵抗感こそ、パソコンソフトの技術習得を遅らせる主要因だといえます。
ではどうすればいいか?
もちろん一つの方法は「他人の評価を恐れず、初心者丸出しの図面とパースを作ること」です。
しかし「人の評価を気にするな」というアドバイスは言われてできるなら言われなくてもやっている類のアドバイスです。
「下手でもいいからたくさん作品を作りましょう」
というのはアドバイスとしては真実ですが無価値です。
ほんとうに必要なのは「下手でもたくさん作ることへの抵抗感をなくす方法」であり、そしてそれにはちょっとした秘訣、ほんの少しの発想の転換が必要です。
それはPhotoshopやIllustratorを「プレゼンのための技術と考えないこと」です。
思考ツールとしての建築学科ソフト
PhotoshopやIllustratorをプレゼンのための技術と思わないこと
すなわち、PhotoshopやIllustratorやCADソフトを
「教授や他人に意図を伝えるプレゼンテーションの道具」
として見るのではなく
「自分一人で設計を深める思考のツール」
と捉えるということ。
これこそが今回の記事で皆さんに伝えたかった主題です。
僕たちは建築コンペ受賞作や卒業設計展を通じてたくさんのプレゼンテーションボードを見てきています。
それらはIllustrator・Photoshop・cadソフトを駆使して作成されているため、自然とこうしたソフトを建築課題における最後の仕上げのためのソフトと考えてしまいがちです。
しかし、こうしたソフトは課題の序盤から中盤、エスキスや草案段階のスタディで使うことができないのかと言えば、もちろんそんな訳はありません。
いうなれば僕達が課題の初期にスケッチを描き、スタディ模型を作り、類似施設を研究するように、
- Photoshopで頭の中の空間をコラージュなどの形で表現し、
- Illustratorで作りたい建築のイメージボードを作成し、
- CADソフトで簡易的なDiagramや検討用の模型図面を作る
ことだってできるはずです。
こうした人に見せることを前提としていない、プレゼンテーションのためではなく自分の検討・確認のための模型・パース・図面作成もまた、4つのソフトのもつ大きな役割です。
新しいソフトの使い方を学ぶのがどうも億劫で手がでないという人には、是非こうしたエスキス・草案のための表現技術を学ぶことをおすすめしたいと思います。
技術習得は小さく始めよ
多くの人は新しいソフトの使い方を学校から出題された課題と並行して身につけようと挑戦します。
- 今回の課題はPhotoshopで模型写真を加工する方法を身に着けよう
- cadで鉄骨造の図面を書く方法を学びたいから今回の設計はS造建築にしよう
限られた時間の中で新しい技術を身に着けるために、このような発想を持つ気持ちはよくわかります。
しかしこうした取り組みは、オリジナルレシピを考案しながら包丁の使い方を学ぶような、極めて歪で遠回りな成長戦略と言わざるを得ません。
日々の鍛錬で失敗や研究を積み重ね、磨いた実力を作品に活かすのが本来のPhotoshopやCADソフトとの付き合い方のはずです。
課題はあくまで日々の努力を発揮する場所であり、提出する作品を技術習得の習作扱いするのは提出相手である教授に対しても失礼な話では無いでしょうか?
あるいはいつまでたっても新しいソフトの使い方を身に着けられない人というのは、課題と技術習得を同時に追いかけているせいで、二兎追うものは一兎をも得ずな状況に陥っているとも言えるでしょう。
課題でPhotoshopやIllustratorを使うのは基本提出直前の時間がない時期であることを考えても、これは得策ではありません。
大切なのはまず課題と無関係にソフトの使い方を学ぶことです。
とは言え忙しい建築学科生のこと、真の意味で課題と独立した練習時間を設けてソフトの使い方を独学で学ぶのは限界があるのも事実です。
だからこそ、エスキスのためにソフトを使うことが重要なのです。
自分が設計した建築を図面にしながらcadを学ぶのは大変です。
だから類似研究調査の際に、既存の図面を模写しながらcadの使い方を覚えるべきなのです。
頭のなかに漠然としか浮かんでいない風景を慣れないPhotoshopで描くのは困難を極めます。
だからまずは教本どおりに手を動かして使い方を覚えることに専念するべきです。
課題締め切り直前にIllustratorの使い方を調べながらダイアグラムなんて作れるわけがありません。
だから毎週のエスキスのたびに少しずつ使える表現を練習していくべきなのです。
かっこいいプレゼンシートやスタイリッシュなポートフォリオをモチベーションにソフトの使い方を学ぶのは悪くありませんが、そればかり追いかけると却って技術習得に肩の力が入りがちです。
もっともっと泥臭い、1枚30分で書き上げるような瞬発力のあるソフトの使い方を覚えることもまた、PhotoshopやIllustratorやCADソフトの重要な使い方なのです。
繰り返しになりますが、これらソフトは単なる表現技術以上でも以下でもありません。
しかし、建築学科の思考は文章や言葉だけでは成立し得ない以上、表現技術の巧拙はそのまま設計力に直結するのも事実です。
設計力が上がってからソフトの使い方を覚えるのではなく
ソフトが使えるようになるから設計力が上がるのです
「パースや模型は綺麗だけど中身のない設計」という評価を恐れるあまり、表現技術の習得を避ける人もいる。
でもAdobeソフトもCADも建築模型も、プレゼンツール以前に思考ツールであり、手を動かす事で思考が纏まる側面もある。
プレゼンの見た目だけ取り繕ってる内に、中身が伴ってくることもある。— 建築学科ごっこ (@gakkagokko) 2019年4月2日
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