建築学科ごっことは?

iPad Proを買おうか迷っている建築学生へ

iPad Proを買おうか迷っている建築学生へ

2020年3月25日、「iPad Pro 11インチ 2020」が発売され、話題となりました。

それに伴い、筆者の質問箱にもiPadProに関する質問が寄せられました。

このページを訪れた方もまた、iPadやiPad Proの購入を検討している方だと思います。

この記事では、

  • タブレットはノートPCの代わりになるか
  • 建築学科でタブレットが使えるのはどのような場面か

 などの点について、解説していきます。

 なぜ建築学科にPCは必須なのか?

はじめに、PCとタブレット端末の根本的な違いについて解説します。

よく、

  • これからはスマホの時代だ。将来PCはこの世からなくなるだろう。
  • 近年のタブレット端末の性能はすごい。もはやPCの性能とほぼ同じだ
  • ゆえに、PCを買わなくてもタブレット端末さえあれば良い

という声を耳にします。

しかしこれらのPC不要論は、スマホとタブレットとPCの違いを全く捉えられていない人の、当てにならない妄言としか言いようがありません。
本ブログでは、「建築学生は、タブレットで代用せずPCを購入すべき」であると断固訴えたいと思います。

まず大前提として、

  • PCは、創作と発信の装置
  • スマホは、消費と受信の装置

という性質の違いがあります。

もちろんスマホで写真を撮影してインスタにアップロードしたり、デスクトップPCでネットフリックスを見たり、その境界は厳密に定義できるものではありません。

しかしこの世に存在する製品・サービスのほとんどはスマホによってではなくPCによって製造・管理・発信されています。

そして皆さんはこれから大学の4年間で建築を学ぶことになります。

そこで取り組むことになる創作活動の複雑さやデータ量の大きさを鑑みれば、スマホやタブレットのマシンパワーというのはインプット専用機と呼ぶに差し支えない程度の出力でしかないのです。

これが建築学科において、(少なくとも2020年時点では)PCの購入が事実上の義務になっている根本的な理由です。

補足:なぜスマホ・タブレットはアウトプットに向かないのか

なぜスマホ・タブレット端末がPCに比べて創作に向かないかといえば、以下の3つの限界があるからだ。

スペックの限界

単純に内蔵されたCPUやメモリやGPUが足りないので、必然的にできる作業に限界がある。iPadにも画像編集ソフトやCADやモデリングソフトはあるが、PC版と比べて明らかに機能が乏しいのはこのためである。

入力デバイスの限界

スマホもタブレットも、基本的にタッチパネルのみでの入力が前提にある。これはマウスとキーボードを併用するPCに比べ、短時間で入力できる情報の量や精度に限界がある。

ファイル管理の限界

タブレットには、アプリを超えて受け渡せるデータのフォーマットに制限がある。例えばPCのように、「CADアプリで線画データを作り、それを3Dモデリングソフトに受け渡し、レンダリングした画像を変数ソフトでレタッチ」など、ソフト同士で作成したデータをやり取りすることが非常に難しい。

逆に言えば、

  • 性能はそれほど要求されず
  • 入力機器はタッチペンのみで十分で
  • 一つのアプリ内で作業がほぼ完結する

という分野であれば、スマホやタブレットでも創作活動が可能である。

この条件に当てはまるのは、現状ではイラスト・漫画といったお絵かき系のクリエイティブのみである(後述)。

また、別売りのBluetoothキーボードを使えば文章執筆やプログラミングも可能である。

しかし、小さいキーボードでは腱鞘炎や肩こりが悪化しやすく、また本格的なプログラミングを行うにはiPadProはやはり力不足である。

どちらにせよ、設計課題をPCなしで乗り切る場合、事実上

  • 手描き製図
  • 建築模型
  • アナログスケッチ
  • 言葉

の4つだけを武器に設計を進める覚悟が必要である。 

「1・2年生の間はタブレット、3・4年生からPC購入」はアリか?

では、それほどPCの性能や創作が求められない新入生のころや、設計課題が本格化する前の2年生の頃であれば、PCは無くてもいいのでしょうか?

結論から言えば、たしかにこの期間はPCが無くても設計課題をこなすことは可能でしょう。

一年生のうちは手描き製図での提出を義務付けている大学もありますし、その段階ではCADやBIMの学習よりも、模型作成やスケッチといったアナログな方面での習熟を優先すべきという声にも、一定の説得力はあります。

しかし、もしこれまで一度も自分のPCを持ったことがないという学生が、いきなり3年生からPCを使い始めるというケースは、一年後の卒業設計やその後の就職においてとてつもなく大きなハンディキャップとなるでしょう。

なぜなら前述の通り、PCとタブレットは設計レベルで根本的に異なる操作が要求されるため、タブレットからPCに初めて乗り換えるばあい、ある程度操作体系を理解するまでの準備期間が必要になるからです。

(例えばPCでは「作成したデータにどんな名前をつけ、どのフォルダに格納するか」を的確に判断する能力は、非常に作業効率に影響する重要なスキルです。しかしこうした技術は、ファイル管理の概念が存在しないタブレット端末では発達しません。)

以上の理由から「1・2年生の間はタブレット、3・4年生からPC購入」という購入の仕方は、不可能ではないがあまりおすすめできない買い方だと思います。

今どき、タブレット端末と同価格(もしくはそれより安い)ノートPCもたくさん流通しています。

特に明確な理由がないのであれば、一台目としてはタブレットよりもPCを購入することを強く推奨します。

amzn.to

タブレット端末がおすすめなのは、こんな人

 では、建築学科でタブレットは全く無用の長物なのでしょうか?

もちろんそんあことはありません。

すでに主力機となるPCを持っており、かつそれを補う形で購入するのであれば、タブレットは大きな力を発揮するのです。

代表例としては以下の属性を持つ人は、タブレットの購入を検討する価値があるでしょう。 

iPadを買うべき人①:とにかく絵を沢山描く

タブレット(というかiPad Pro)は、絵師や漫画家、アーティストにとってiPad+Apple Pencilは魔法の杖です。とにかく買え。

一枚10時間以上の時間をかけて絵を作画する人本格志向の方にとって、iPadProはぜひ圧倒的におすすめできます。

また、一枚あたりそこまで時間をかけることはないけれど、スケッチブックを一ヶ月あたり一冊ペースで使い潰すようなスケッチ魔の方であれば、Proではないタブレットと3000円程度のタッチペンがおすすめです。

iPadを買うべき人②:大きな画面を気軽に持ち歩きたい

前述の通り、タブレットは「受信機」としての性能も高いので、

  • カフェ等で、他人にプレゼンしたり、友人とディスカッションすることが多い。
  • ノートPCの画面に加え、調べ物や資料閲覧用の別画面がほしい。
  • 建設現場などでの「図面の閲覧・確認・修正」に特化した、コンパクトなデバイスがほしい。
  • ベッドの中や外出中でも、大きな画面で動画・漫画を鑑賞したい。

 という人にもおすすめできます。

こちらの場合は、無理に高いiPad Proとか買わなくてもいいと思います。

iPadを買うべき人③:「タブレット端末って、なんかかっこいいじゃん!」

まぁ、なんだかんだ言ってタブレットってお洒落じゃないですか。

未来の働き方っぽいというか。

そういう、自分のテンションを上げる材料として5万10万くらい出せるよという方は、買ってもいいと思います。

そういうのも、創作では大切です。

以上3点が、「ノートPC よりもタブレットのほうが好ましい」といえるメリットだと思います。

(単に安い・軽い・便利で言えば、13インチ以下のノートPCのほうが断然お買い得かつ高機能です。)

iPadProは建築学科に必要?

また、タブレット機種の中でも最高峰に位置づけられがちなiPad Proに関する質問も多く寄せられます。

結論としては、iPadProとApple Pencilは漫画家やイラストレーターなどをメインターゲットとしている機種と考えてください。

少なくとも建築学科のスケッチ程度であれば、iPad Airと百均のタッチペンでも十分すぎる性能を発揮してくれます。

iPad ProとApple Pencilが絶賛されているのは、ペンの応答性能や筆圧感知の精度です。

この性能が並大抵では無いようなので、本格的に絵を書く人であれば購入の価値は大いにあるといえるでしょう。

iPadProは、タブレットの進化版というより、PCと液タブが一体となった端末と捉えたほうが、よりデバイスとして正確かもしれません。

そのため、現在ペンタブや液タブを利用している方であれば、建築学科とか意匠設計とか関係なく、購入を検討してみてください。

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あと、じっくり一枚絵を仕上げるというよりも「とにかくエスキスとかミーティング中に、ガシガシスケッチしたい」 みたいな人であれば、iPad Airと安物のペンでも十分だと思います。

タブレットと創作活動

結局建築学科におけるタブレット端末とは、「隙間時間の創作活動」を広げるデバイスなのです。

つまりiPadが建築においてもてはやされるとすれば、それはこれまで建築業界においてちょっとした時間に行われていた

  • 企画書・業務資料の作成
  • アイデアスケッチ
  • 少人数でのプレゼンやミーティング
  • 図面データやモデリングデータの閲覧と修正

などの作業を、時間や場所にとらわれず、いつでもどこでもできるようにしたという点においなのです。

その意味においてタブレット端末は、建築において大きな役割を果たしました。

しかし逆に言えばタブレット端末というのは、(iPad Proといえども)「隙間時間ではない本命の作業」には役に立たない程度の機能・スペックしか持っていません。

(繰り返しになりますが、イラストレーション作画は除く)

 そのため、いよいよ設計の学習が佳境にはいる三年生から四年生になって必要な

  • CADソフトによる製図
  • 3次元CADなどによるモデリング
  • レンダリング処理やBIMでのシミュレーション

などの作業が、PCなしでは困難になってくるのです。

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